比較発想法
われわれは、あるものについて頭の中で思い浮かべているときでも、実際はそれとは別のあるものを持ってきて、この二つを並べて考えていることが多い。それだけではなく自分ではまったく意識しないうちに何かほかのものと比べていることも少なくない。つまりはっきり意識していようといまいと、日常生活ではしばしば我々は「比較」を行っている。
そのような従来からある思考過程をそのまま活用して、比較による発想をとり入れたものを「比較発想法」と名付けた。
比較発想法は比較による相対的思考が土台となっており、「AはBに比べてこれこれの点ではすぐれている」というように、連続的、多面的に状況に応じて柔軟な態度がとれるようになり妥当な判断ができるようになる。
また比較には、分析という足元を固める目的のほかに、新しい発想を得るためと、得られた発想を評価するための、大きな目的がある。
比較による発想のきっかけは、「今まである物が高いから何とかしたい」とか、「他社の製品より良いものを考えたい」とかいったことをもとに始めることとなり、それが比較の対象になる。
金野正博士(1)は比較の手法として、対比、類推、止揚の三つに分けて、その発想の過程を説明している。
その中で類推のプロセスとして次の三つをあげている。
- ある対象Aを取り上げ、その中で本質的と思われる要素に注目する。
- 他のものは気にしないで、それだけを取り出す。
- それを核として必要な要素を補足し、別の対象Bに仕上げる。
また市川亀久弥博士(2)の等価変換理論(ET-Thinking)では、提唱する等価方程式により次のことを説明している。
- 〔Aο〕〔Bτ〕ともに既知に属している場合に、適当な観点(Vi)によって、両者に共通する〔cε〕を抽出して、この式を成立させることを両者の等価関係を発見したという。
- 既知である〔Aο〕を適当な観点(Vi)の導入によって〔cε〕にまで抽象(分解によってΣSca-iの廃棄)し、これを右辺の変換系(τ)上に新しい条件群(ΣScb-i)を加えて再構成することを〔Aο〕から〔Bτ〕へ等価変換したという。
つまり過去より受け継いだものの中から、何がしかのものを捨て去り、かつ、これに現時点で獲得できる別の新しい要素を導入して、改めて全体を再構成していくことである。
先の類推における「本質的な要素」と等価変換における〔cε〕は、相通ずるものである。
比較発想法
- 従来からある物Aを取り上げ、その中で本質的と思われる要素(PAU)に注目する。
- PAUを含んだ新しい物Bを数多く考える。つまりPAUを核として、必要な要素を追加し、新たなBに仕上げることである。
- 新しく考えた物Bが、従来からある物Aに含まれていた本質的要素が失われていたり、変質していないか検証する。
引用文献
(1)新製品開発のための「比較の発想」 金野正著 日科技連
(2)「創造性の科学」(図解・等価変換理論入門) 市川亀久弥著 日本放送出版協会

