JR伊丹駅西側に広がる公園が「有岡城跡」。こんもりとした土盛りと石垣、一定幅の芝生広場は、なるほど、城郭とお堀そのもの。何度も通っていた場所なのに、「城跡」として見ていなかったのはうかつだった。 猪名川の西岸に築かれたこの城は、鎌倉時代の14世紀ごろから約300年間にわたり伊丹氏の居城で、「伊丹城」と呼ばれていた。伊丹氏は戦国時代に滅び、織田信長配下の武将荒木村重の入城とともに「有岡城」と名付けられた。「有岡城は町をぐるりと取り囲む”総構え”という築城方法だったんです」と言うのは伊丹市文化財保存協会などに所属し、「我が町伊丹」というホームページで市内の見どころを紹介している山本俊夫さん。戦国時代に流行した総構え形式の城郭の中でも、有岡城は最も古いものの一つなのだそうだ。
有岡城跡から西へ向かうと復元された堀跡が。現在ニトリがあるあたりの発掘調査によって遺構が確認された
発掘された土塁と石垣。自然石を使った「野面積み」の石垣には、五輪塔の台石なども見られ、当時の様子がうかがえる
有岡城は伊丹段丘の高低差を利用し、南北1.6キロメートル・東西800メートルに及ぶ総構えが築かれていた
城跡から「伊丹郷町」を通って北の砦跡に向かう。1579年に廃城になった後、掘割(地面を掘って水を通した所)に囲まれた台地の上に形成された町は、城郭から産業の町に変わり、酒造りの「伊丹郷町」へと発展した。「白雪長寿蔵」や「みやのまえ文化の郷」など、歴史を感じる建物が並んでいるので、つい寄り道してしまう。 商店街をぶらぶらしながら郷町の石畳をたどると猪名野神社。総構えの北端にあたる。「あの土塁が岸の砦跡です。その向こう、バスが通っている道はぐるりと堀だったんですよ」と神社で教えてもらった。その堀跡は「伊丹緑地」として整備され、西国街道に続く遊歩道になっている。以前植物観察をしながら歩いたこの道、砦の一部だったなんて知らなかった。散策する人たちが絶えない伊丹緑地、視点を変えるとまた違う面白さが発見できる。
伊丹は「清酒発祥の地」と伝えられている。白雪酒造が蔵を利用して開設した博物館で、酒造りについてお勉強
猪名野神社にある岸の砦跡。171号線まで続く伊丹緑地の出発点になっている
北の端を見たら今度は南の端へ。「総構え城郭跡」をたどって歩くと、ところどころに石垣や段差が見つかる。「あの道からこう繋(つな)がって……」と土塁跡を探して歩くと、2キロの道のりもあっと言う間だ。南端の鵯(ひよどり)塚砦跡に続く道は「大坂道」と呼ばれた古い街道。「昔の家が残っとったんやけど、震災でだいぶ壊れてしもた」と地元の人は言うが、それでも虫籠(むしこ)窓の古い日本家屋が点在し、なかなか風情のある道だ。鵯塚砦跡周辺の住宅街には堀跡らしき水路も残っていて、たどると狭い路地にずんずん入っていくので面白い。普通に歩いていたら、通らないような道。城郭跡探しのおかげでちょっと得したような?
尼崎伊丹線より2本東の「旧大坂道」。のんびり歩ける静かな街道だ
山本さん作成の地図を元にした城郭跡の図。
http://wagamachi-itami.jp/ではさらに詳しく紹介されている
鵯塚砦跡はマンションの敷地内にあるので見学はできないが、遠くからもこんもりした小山が見える
総構えの南東部分。有岡小学校前の水路は城郭の遺構らしい景色を作っている
猪名野廃寺跡、御願塚(ごがづか)古墳まで歩いて、かなりへとへとに。稲野駅近くにある「つかしん天然温泉 湯の華廊」で一服だ。源泉のゆう出地は伊丹市、建物は尼崎市にある広いスーパー銭湯で、源泉かけ流しの露天風呂が人気。岩盤浴や体に優しい軟水の白湯も女性に好評だが、私が気に入ったのは「高温風呂」。47℃と高温の源泉をそのまま使ったお風呂で、熱湯(あつゆ)好きにはたまらない。「気軽に源泉かけ流しが楽しめるし、玄関前にある足湯は無料で誰でも入れます」とスパ事業部の武蔵哲彦さん。思いっきり歩いた後に、ありがたい立ち寄り湯だ。
料金●大人750円、子ども(4歳以上)400円、3歳以下無料。 会員割引有り。岩盤浴は別料金。 入浴回数券(会員のみ、6枚綴り)大人3900円、子ども2000円。 時間●10:00〜翌朝1:00
尼崎市塚口本町4−8−12 TEL/06−6423−4426 http://www.tsukashin.com/yunokarou/