39 与謝蕪村
自筆書簡
「自筆書簡」より

伊丹5丁目3
有岡センター横
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39 与謝蕪村 自筆書簡「自筆書簡」より

 追啓
酒一樽いな河の小魚
右両品共に六月六日夕かた
京着いたし神事之間ニ
合忝存候。しかしいな河の魚ハ
腐れたゝれて臭気
甚しく一向やくニ立ず
四ツ辻へすてさセ申候。捨テニ
行者 鼻をふさき 兒を
肖け候て持出し、飛脚屋より
持参り候男も道 くさきニ
こまり候よし小言を申候。
いか様炎熱き時節
所詮京迄ハ持かたく候。
向後暑中ニ河うをなと
御登セ被下候義 御無用ニ御座候。
折角御親切にこゝろを
御つくし被成候ても用に立不申
其上駄賃の費 彼是以
無益之事ニ御座候。御存意之
はとハ甚かたじけなく候。右の
義申進候事いかゝニ存候へ共
向後御心得のためニ御座候故
無遠慮申進候。以上
          蕪村
  六月十九日
 東瓦様
牡丹切て気の
 おとろひしゆふへ哉

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与謝蕪村 (享保元年(1716)~天明三年(1783))

   追伸
 酒一樽、猪名川の小魚、右二つの品物はどちらも六月六日の夕方、京都に到着し神事の間に合い、かたじけなく存じます。しかし猪名川の魚は腐乱して臭気甚しく、全然使いものにならず、四ツ辻へ捨てさせました。捨てに行く者は鼻をふさぎ、顔をそむけて、小魚を外へ持ち出し、飛脚屋より持参致しました男も、途中臭いのに困りました旨、文句を申しておりました。本当にどう見ても暑い最中ですから京都までは持ち難うございます。今後は暑中に川魚など、お送りくださいますことはご無用でございます。せっかくご親切にお心くばりなされましても役に立ちませんし、その上運搬費の無駄遣い、あれこれ考えると、無益のことでございます。お気持ちはとても有難うございます。このことを申し上げますことは、どうしたものかとは存じましたが、今後のご参考のためでございますから、遠慮なく申し上げました。  以上。
          蕪村
  六月十九日
 山本東瓦様

 丹精こめた牡丹を、よんどころない人の所望で、夕方ようやく思い切って一花切ったが、その後はぐったり気抜けして、ただぼんやり花を眺めているばかり。

よさのぶそん (手紙)

   追伸
 酒を一たる、いな川の小魚の二つの品物はどちらも六月六日の夕方、京都にとどきまして、お神さんにお祭りすることに間に合いまして、ありがとうございました。しかし、いな川の魚はくさって、あまりにもくさく、ぜんぜん使いものにならず、四つつじへ捨てさせました。捨てに行く者は鼻をふさぎ、顔をそむけて、小魚を外へ持ち出し、ひきゃく屋より持ってきた男も、と中くさいのに困ったと、もんくを言っておりました。本当にどう見ても暑いさいちゅうですから、京都までは持ちにくいと思います。今後は暑い時に川魚など、お送りいただかないよう、お願います。せっかくご親切にお心くばりいただいても、役に立ちませんし、その上うんぱんひようのむだ使い、あれこれ考えますと、むだなことと思います。お気持ちはとてもありがとうございます。このことをお話することは、どうしたものかとはまよいましたが、今後のご参考のためですので、えんりょせずにお話しました。  以上。
          ぶ村
  六月十九日
 山本東瓦様

 けんめいに力を入れて作った牡丹を、お世話になった人のき望で、夕方に思い切って一花切りましたが、その後はぐったり気ぬけして、ただぼんやり花をながめているばかりです。