40 梶曲阜
自筆
「照顔斎道の記」より

伊丹5丁目3
有岡公園内
バス停「南本町1丁目」東へ


40 梶曲阜 自筆「照顔斎道の記」より天は月に遊び地は花に遊ぶをもて風雅
の元とす祖翁ハ奥の細道をも尋て五七五の
作意をいつ迄もつきせぬ余情定め置かれける
己も此道をしたはんとて嘉永元申年弥生の
空を待兼道祖神のまねきにあひ三りの
灸をすゆるより白川の関を越へ松嶋の月を
見んと心そゝろに茂助といふ供をつれて
杖をとりて

道ミみや尋る人も千松嶋

と一句を言ふて三月四日早朝より浪花表へ
発足す其頃天遊渓斎糸海に逗留 又
 糸海の衆中送別の句々左に

はたこ町通り過して花すミれ    天遊

あかぬ日のあかね道なりきしの声  渓斎

風流の賈家君に似たるは稀なり。
遠く名迹を指して旅衣を試む。
奇貨居くべし松嶋の翠、亳底に収め尽して
嚢を括りて帰ることを試む。    静庵

松嶋や雄しまによするしらなみの
立ちかへる日をいつとまたまし   良臣

松の香をしほりに出よ花の中    太乙

むつのくのつとの花見や嵐山    ぬか人

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梶曲阜 (寛政十一年(1799)~明治七年(1874))

 この天地の間においては花鳥を愛で、風月に遊ぶことを風雅の根元とする。芭蕉翁は「奥の細道」の旅を試み、俳諧の特に大切な心をいつまでも尽きることのない余情として定め置かれたのである。私もこの「奥の細道」のあとを恋い慕い、嘉永元年戊申の年、芭蕉翁と同じく春霞の立つころになるのを待ちかねて、道祖神の招きにあい、足を丈夫にするため三里の灸をすえるや否や、白河の関を越え、松島の月を見ようと、気もそぞろに、茂助という従者を伴い、杖を手に持って

 道中、問いかける人もみな松島をめざしている旅人である。

という一句をよんで、三月四日、早朝より浪花へ向けて出発した。そのころ、天遊と渓斎は伊丹(糸海)に滞在していた。その句および伊丹の仲間の人々の送別の句を左に記しておく。

 道中、宿駅を通過して今日もあなたは、すみれの花咲く春の野を行くことだ。 天遊

 いつまでも、どこまでも続くはてしない旅である。どこからともなく聞こえてくるきじの声が、山野を行くあなたの旅情を慰めてくれるだろう。 渓斎

 あなたのように風雅を解する商人はめずらしい。このたび、あなたは風騒の人々の後を慕い、数々の名所、旧跡をめざして、遠くみちのくに旅立とうとしている。折りしも松島は松の緑も一段と色鮮やかなころ、訪れるのにはまたとない時である。この好機を逃してはならない。そして、すばらしい景観を筆に任せ、袋が一ぱいになるほど、すべて書きとめて帰ってくるようにしてください。 静庵

 松島の雄島が磯に白波が寄せては沖へかえっていく。伊丹にお帰りの日をいつとお待ちしましょうか。どうかお元気で、早いお帰りを。 中村良臣

 美しく乱れ咲く花の中を行くあなた、松の香りを枝折(道案内)として、そこを通り抜けなさい。 山口太乙

 嵐山での花見を、みちのくへの旅のお供として元気に出発を。 岡田糠人

かじきょくふ (旅の日記)

この世では花や鳥を愛し、風や月と遊ぶことは、風流を楽しむ元です。ばしょうは「奥の細道」の旅をしていますが、はい句の大切な心をいつまでも残しています。私もこの「奥の細道」のあとをしたって、かえい元年に、ばしようと同じに、春かすみの立つころになるのを待ちかねて、旅の神のまねきにさそわれ、足をじょうぶにするため、足におきゅうをすえて、白河の関所を越え、松島の月を見ようと、気もせかされるが、茂助というおともをつれて、つえを手に持って出かけました。

道のと中で、問いかける人も皆、松島をめざしている旅人です。

という一句をよんで、三月四日、早朝よりなにわへ向けて出発しました。そのころ、てんゆうとけいさいは伊丹におりました。その句および伊丹のなかまの人々から、旅を送る句を左に書いておきます。

道のと中、宿ばまちを通って、今日もあなたは、すみれの花咲く春の野を行くことです。 てんゆう

いつまでも、どこまでも続くはてしない旅です。どこからともなく聞こえてくるきじの声が、山野を行くあなたの旅をなぐさめてくれるでしょう。 けいさい

 あなたのように風流を知る商人はめずらしい。このたび、あなたは風流を知る人々の後をしたって、数々の名所、旧せきをめざして、遠くみちのくに旅立とうとしています。今ごろは松島は松の緑も一そう色あざやかなころ、訪れるのにはまたとない時でしよう。このようなよい時を逃してはなりません。そして、すばらしいけしきを筆で記して、袋が一ぱいになるほど、すべて書きとめて帰ってくるようにしてください。 せいあん

松島の島のまわりに白波がよせては海へかえっていきます。伊丹にお帰りの日をいつとお待ちしましょうか。どうかお元気で、早いお帰りを。 よしおみ

美しくみだれ咲く花の中を行くあなた、松のかおりを道あんないとして、そこを通りぬけなさい。 太乙

あらし山での花見を、みちのくへの旅のおともとして元気に出発を。 ぬか人