41 井原西鶴
西鶴織留
「西鶴織留」より

伊丹5丁目3
有岡公園内
バス停「南本町1丁目」東へ


41 井原西鶴 西鶴織留「西鶴織留」より
富貴の家にうまれ出るは、前世の種也。
莵角人は善根をして、家業大事にかくべし。
池田・伊丹の売酒、水より改め、
米の吟味、麹を惜まず、
さはりある女は蔵に入ず、
男も替草履はきて出し入れすれば、
軒をならべて、今のはんじゃう、
舛屋・丸屋・油屋・山本屋
酢屋・大部屋・大和屋・満願寺や
賀茂屋・清水屋・此外次第に栄て、
上ゝ吉諸白松尾大明神のまもり給へば、
千本の椙葉枝をならさぬ、
時津の国乃隠里かくれなし。
  『西鶴織留世乃人心』
  一、津の国のかくれ里より

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井原西鶴 (寛永十九年(1642)~元禄六年(1693))

 金があって地位も高い家にうまれるのは、前世に善い行いをしたからである。とにかく人間は善根を積んで、家業は大切にしなければならない。池田や伊丹で売り出す上酒は、まず水から吟味し、良質の米を選び、麹を惜まずに使う。月の障りのある女は蔵に入れず、男でも草履を履き替えて酒の出し入れをするほど念を入れるので、軒を並べて今の酒屋の繁盛がある。舛屋・丸屋・油屋・山本屋・酢屋・大部屋・大和屋・満願寺屋・賀茂屋・清水屋など、この他の酒屋も次第に栄えている。酒の神様の松尾大明神が守って下さるので、酒屋の看板に掲げた千本の椙の葉が吹く風にも枝も鳴らさないほどの恵みを受けて、津の国の隠れ里であることは、酒の名所として世に隠れもないのである。

いはらさいかく (伊丹の酒)

金があって地位も高い家にうまれるのは、前世によい行いをしたからです。とにかく人間はよい行いをして、家の仕事は大切にしなければなりません。池田や伊丹で売り出す酒は、最初によい水を選んで、良い米を選び、こうじをおしまずに使う。病気のある女はくらに入れず、男でもぞうりをはきかえて酒の出し入れをするほどねんを入れるので、のきを並べて今の酒屋のはんじようがあります。ます屋・丸屋・油屋・山本屋・す屋・おおべ屋・やまと屋・まんがん寺屋・かも屋・しみず屋など、この他の酒屋もしだいにさかえています。酒の神様のまつお大みょう神が守って下さるので、酒屋のかんばんにかかげた千本のすぎの葉が吹く風にも枝も鳴らさないほどのめぐみを受けて、津の国のかくれ里であることは、酒の名所として世にかくれもないのです。