46 佐藤惣之助
稲垣達郎筆
「詩集水を歩みて」より

中央6丁目
西の町児童遊園地内
バス停「伊丹本町」南


46 佐藤惣之助 稲垣達郎筆「詩集水を歩みて」より

 伊丹で
  -鬼貫の墓に詣づ-
折りから、折りからに、秋もほのくれ
みかんの青い酒倉について
こっそり曲がった墨染寺
月夜がらすも鳴きそうな
わが木槿(鬼貫)翁のをくつきに
旅なればかたはらの鶏頭を
いささか手折りつ、ききぬ
露いっぱいの虫の音
空いっぱいのものゝ寂び音

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佐藤惣之助 (明治二三年(1890)~昭和一七年(1942))

 ほのかに暮れかかった秋の夕方、古い時代のおもかげを残す静かな町並みをそうっと通って、鬼貫翁の墓に詣でる。旅の身のこととて、何の用意もなく、そばにあった鶏頭の花を少しばかり手折って墓前に供える。あたり全体は閑寂に静まりかえり、露のおく草にすだく虫の声を聞くのみ。-空いっぱいにひろがる、このさびしさ。

あらき村しげ・たし (おにつらのはかにおまいりした時の詩)

わずかにくれてきた秋の夕方、古い時代のおもかげを残す静かな町なみをそろっと通って、おにつらの墓におまいりしました。旅のと中なので、何の用意もなく、そばにあったけいとうの花を少しばかり取っておはかにそなえました。あたり全体は静まりかえって、つゆがついた草にいる虫の声を聞くだけです。-空いっぱいにひろがった、このさびしさは、どういうことでしょう。